波の上の魔術師

\
胸に穴が開いて、風が抜ける。
だが、どうしようもなかった。
古い恋は新しい恋に勝てない。

\
おれはその手をしっかりと握った。
意外なことに、悪魔の手のひらはあたたかかった。

\
結局酒の味を決めるのは値段ではなく、誰といっしょにのむかなのだ。

\
数よ、泣き叫ぶがいい。

\
おれは保坂遙といっしょにすこしだけ泣いたけれど、それは彼女とおれの出会いが哀れなだけだはなく、自分の心がいつの間にかこんなふうに裂けてしまったのが悲しかったせいかもしれない。